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翻訳コラム05翻訳一括見積サイトについて


10年、15年くらい前からでしょうか。いわゆる「一括見積サイト」なるものが出現しはじめました。「気になる業者に一括で問い合せ」、というアレです。「引越業者」や「自動車保険」など、皆さんも一度ぐらいは使用されたことがあるでしょう。

この一括サイト、右も左も分からない業界で金額を比較したり業者を探したりするための窓口としては便利ですし、相見積で金額的な譲歩を引き出すためには効果的なツールです。いわゆる「他社は○○円って言ってるんだけど・・・」という使い方ですね(笑)。かく言う私も独身時代は引越業者さんに同じような戦略を使って交渉したものです。

さて、実は数年前から翻訳業界にもこの「一括見積サイト」というものが出現しています。「翻訳 見積」などで検索すれば検索エンジンの広告スペースに必ず出てきますので、すぐに見つけられることでしょう。

上で述べたように、私自身はいわゆる一括サイトを否定するつもりはありません。会社としてもささやかながら出稿していた時期がありましたし、正しく活用すればユーザー・広告主の利になるものだと思っています。しかし、こと翻訳関係の一括サイトについては課題が多すぎてあまりお勧めはできないと考えています。

とにかく、運営会社が「翻訳」というビジネスとお客様のニーズをまったくと言っていいほど理解していないのです。

あるサイトでは、候補となる翻訳会社のフィルタリングが全くされないようになっています。例えば日本語から英語・中国語の2言語への翻訳を求めているユーザーがいるとして、このユーザーはもちろん英語と中国語両方に対応している翻訳会社にしか興味がないのですが、それでもこのサイトはこのユーザーに対して中国語非対応の会社を含めたすべての掲載企業(それも数十社!)を紹介してくれるというわけです(笑)。翻訳会社といっても様々であり、そもそも対応言語だけでもそれぞれ異なっています。1万人以上の登録翻訳者を擁して数十カ国語に対応している大手エージェントもあれば、英語⇔日本語など特定の言語に特化した業者もある。にも関わらず、いちいちチェックボックスを外さなければすべての業者に問い合わせしてしまうことになるとは、いかがなものでしょうか。

そもそも、その業界について良く分からないから一括サイトを使っているのに、そこで数十社のなかから自分で選択しなければならないというのは本末転倒もいいところです(そうしなければ、ユーザーは数十社からのメール・電話攻勢に対応しなければならないのですから!)。

運営会社としてはより多くの掲載企業に問合せメールを送れば、それだけ多くの広告料が入るわけですから、利益追求を考えれば当然といえば当然です。しかし、ユーザーにとってみれば、そもそもそんなに多数の翻訳会社に対応しきれるはずもなく、ひっきりなしに電話が鳴るようでは逆に仕事になりません。弊社が出稿していたときも、お客様から「ものすごく多くの企業様よりメールが届いており正直戸惑っております・・・」などの声を聞くことが多かったですし、多くの電話やメールにイラだったお客様から罵声を浴びせられたこともありました。 翻訳会社にとってみても、そもそも数十社の相見積になるような案件には営業力を割きにくくなります。そうして広告主が離れていけば結果的に誰が得をするのかと思わざるを得ません。

その他にも、ユーザー側からファイルの添付ができない(翻訳会社側は現物を見なければ正確な見積は困難です)ため、結局ユーザーがあらためていちいち各翻訳会社に原文を送付しなければならないサイトなど、現存する一括翻訳見積サイトには翻訳業界にいれば当たり前の配慮が欠けているものばかりです。

こんなサイトを見ると、「ああ、翻訳をやったことも頼んだこともない人間が想像で適当に作ったのだな」と思ってしまうわけです。

インターネット上のこうしたサービスは、ユーザー・広告主・運営会社がWIN-WIN-WINの関係にならなければ意味がありませんし、長続きもしないと思います。批判ばかりしているようですが、もし、そうした配慮が十分になされた翻訳系の一括サイトがあるならば、むしろぜひ出稿したいと思いますので、運営会社の方はお声がけくださいね(笑)。(2013/8)